
■歯周病菌DNA検査(=PCR検査)
位相差顕微鏡検査ではお口の中の細菌の様子を観察することができますが、これだけでは500~700種類もの細菌の中から歯周病原因菌を特定することはできません。そこで細菌のDNAを数時間で数十万倍まで増幅させ菌種を同定することができるPCR法を活用したDNA細菌検査を必要に応じ行うことがあります。
多くの種類の口腔内細菌の中でも、通称レッドコンプレックスと呼ばれている3種類の菌群が歯周病に大きく関与しています。
- Prophyromonas gingivalis 略してP.g.菌
- Tannerella forsythensis 略してT.f.菌
- Treponema denticola 略してT.d.菌
レッドコンプレックスは歯周組織(歯肉、歯根膜、骨)を短期間にかつ不可逆的に破壊します。そこでこの3種類に的を絞ってPCR法で検査します。
ここで一例をお見せします。
検査の実例


九段ブルー歯科<市ヶ谷>に通院中のこの患者さんの場合、P.g.菌と僅かのT.f.菌の存在が判明し、口腔内細菌に占めるレッドコンプレックスの割合から、歯周病リスクは中等度と診断されました。
歯科医学の進歩により約700種類もの菌の中でこれら歯周病原菌の犯人像が分かってきました。科学的なエビデンスも揃っては来ましたが、残念ながら未だ特定菌種の存在とそれによる将来の歯周病進行の相関関係のデータが不足しているため「PCR検査が歯周病治療の必須条件である」という学会のコンセンサスは得られていません。今後の研究課題としては残るものの、PCR検査でレッドコンプレックスを見つけ、ハイリスク患者さんかローリスク患者さんかの見極めをつけることは、事前に治療計画を立てたり、メンテナンスに反映させる上で重要な意義があると考えております。